Original Article: 36Kr Japan
米国のフードテック企業「ビヨンド・ミート(Beyond Meat)」の上場成功は「人工肉」業界に新たな風を吹き込んでいる。
今年5月2日、植物由来の代替肉を製造・開発する米ビヨンド・ミートは、ナスダックに上場すると、株価が初日に163%も高騰し、新規株式公開(IPO)後の取引初日としては2008年世界金融危機以来の最高記録となった。その後、中国国内でも関連株が軒並み大幅に上昇した。英バークレイズ銀行は5月に発表した最新報告で、今後10年間で人工肉は食肉市場で10%のシェアを占めるようになり、1400億ドル(約15兆1000億円)規模に達すると予測している。
1000億ドル規模のブルーオーシャンの誕生が期待されている中で、中国にもビヨンド・ミートのような企業が誕生する可能性について、植物由来の食品を中心に持続可能なエコライフを推進する香港のソーシャルベンチャー「Green Monday」の創業者である楊大偉(デビッド・ヨン)氏から話を聞いた。
Green Mondayは2012年に設立され、現在は世界約40カ国で事業を展開しており、企業や学校、政府機関などの協力を得て、「月曜日は菜食にしよう(グリーン・マンデー)」というキャンペーンを主宰している。また、同社に所属する企業グループは小売や卸売、投資、フードテック業務なども手掛けており、香港でスーパー「Green Common 」を9軒運営するほか、植物由来の豚肉製品「オムニポーク(Omnipork)」を売り出している。今年の第3、4四半期に中国市場に進出する予定だ。
オムニポークは、楊氏が率いるフードテック企業「Right Treat」が展開するブランドだ。同社初の商品は、挽肉タイプで食感が豚肉に近い植物肉だ。主原料はエンドウ豆や大豆、キノコ、米だという。
多くの人がまず疑問に思うことは、この新商品と従来の「植物肉」の違いは何かという点だろう。
楊氏によると、同社は2016年に商品開発に着手し、2018年になってようやく商品化の水準にまで到達したという。従来の植物肉も本物の肉に似ているが、調理が容易ではなかった。そのため、同社の商品は消費者にとって扱いやすく、「味や栄養、食感などの面でも本物の豚肉と同等、もしくはそれ以上に優れたものにする必要があった」と楊氏は語った。
アジアの大半の地域では、牛肉よりも豚肉の方が多く消費されており、楊氏も「中国国内の食肉消費の65%が豚肉」と述べる。さらに「植物を使った代替肉を普及させるには、消費者の基本的な飲食習慣を尊重する必要がある」と続けた。同じひき肉料理でも欧米人はハンバーガーを好むが、アジア人は餃子を好む。さらに、豚肉は点心や料理に広く使われているため、アジア市場における主な植物肉の需要は豚肉にある。
現在、オムニポークはシンガポールやタイ、香港、マカオ、台湾などで多くの飲食店と提携し、小売業も展開している。一袋230グラムのオムニポークの価格は43香港ドル(約600円)で、本物の豚肉よりも値段は高い。しかし、楊氏の話では豚コレラの影響で豚肉価格が上がっているため、今年5月時点では、香港市場でのオムニポークは本物の豚肉よりも安くなっているという。
技術革新によって生産量が増加すれば、代替肉の価格は長期的に下がっていくだろう。環境配慮に対する圧力が大きくなり、家畜の飼育コストが上昇する中で、代替肉は本物の肉よりも安くなるに違いない。価格の安定性も植物肉の強みであるが、庶民に浸透するかどうかは品質で決まると楊氏はみている。
中国市場に進出する戦略として、楊氏は「商品先行」を掲げる。人口14億人の中国は重要な市場だ。オムニポークはすでに飲食チェーンや小売プラットフォームと提携しており、若者を主要ターゲットとした飲食店や次世代型生鮮スーパーなどを提携対象に、中国で「人工肉」の普及を進めることを目標にしている。
(翻訳・虎野)