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アメリカではビヨンド・ミートなどが販売する代替肉の市場が急成長しているが、アジアでは香港発の代替豚肉、オムニポークが注目されている。アジア人のためのおいしい代替肉がセールストークで、世界最大の豚肉市場、中国進出も間近だ。

◆植物由来ポークでアジア市場に参入、目指すは中国

オムニポークを開発し販売しているのは、香港を拠点とするスタートアップ企業Green Mondayだ。創業者のデビッド・ヨン氏は、自社のベジタリアン食料品店やレストランで植物由来のハンバーガーや肉を使用しない商品を販売していた際に、ここにビジネスチャンスがあると確信したという(CNN)。

2018年4月に市場に登場したオムニポークは、大豆、えんどう豆、キノコや米を原料とし、豚肉に近い味と食感を実現した植物由来の代替肉だ。実は世界で一番消費されている肉は豚肉で、ヨン氏はこの点が見過ごされてきたとCNNに話し、代替豚肉に大きな可能性を感じている。

ユーロモニターの調査では、世界の豚肉消費量は7880万トンで、そのうち4120トンは中国で消費されている。オムニポークは現在、香港、シンガポール、台湾、タイで販売されているが、ヨン氏は世界最大の豚肉消費国、中国への進出を初期の段階から目指していた。すでに大手レストランやスーパーマーケットとの話し合いも最終段階に入っており、今年末には中国市場に参入予定ということだ(ブルームバーグ)。

◆思わぬチャンス? 中国の豚肉不足深刻

実は中国ではアフリカ豚コレラが流行し、今年7月までに昨年に比べ国内の豚の数が3分の1も減少。豚肉の価格は前年の1.6倍に上昇している。豚肉の不足を埋める牛、ラムなどの価格も上昇しており、価格に引き寄せられ、いまや世界中の肉が中国に集まっているということだ。その結果、中国の肉全体の輸入量は昨年比で90%も増加している。米中貿易戦争で高い関税をかけられているアメリカの肉でさえ、今年6月は金額で昨年を上回る好調ぶりだという(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 多くのメディアが、中国の豚肉不足がオムニポークの進出に絶好の機会を与えそうだとしている。CNNによれば、そもそもアフリカ豚コレラの流行以前から、中国では肉の消費を半分にするべきという食生活ガイドラインが発表され、豚肉の消費は下降気味だったという。当時はこれがチャンスになると思っていたヨン氏は、まさかオムニポークの進出がアフリカ豚コレラの流行と重なるとは思いもしなかったと述べている(フィナンシャル・タイムズ紙)。

 アフリカ豚コレラの流行後、豚肉とオムニポークの価格差は狭まっており、これも追い風となりそうだ。香港でのオムニポークの価格は230グラムパックで43香港ドル(約594円)であるのに対し、豚肉500グラムは90香港ドル(約1244円)から100香港ドル(約1382円)で競争力は十分だ。中国本土の豚肉の価格は、安ければ500グラムで20元(約305円)程度だ。しかし高級ポークなら100元(約1526円)ということで、こちらと比べればオムニポークは安いと言える(ブルームバーグ)。

◆旨味が決め手 さらなるテクノロジーが代替肉を進化させる

気になる味のほうだが、オムニポークはアジアの旨味満載の食文化を理解した研究チームによる開発ということで、アジア人好みとなっているという。豚肉を使った小籠包と食べ比べをしたCNNの記者たちによれば、味の違いは確かにわかるが、オムニポークの小籠包は、料理としておいしかったと評価している。

 いまのところミンチ状の製品しかないため、さまざまな豚肉料理に対応できるよう、ばら肉やチャーシュー用の肉などの開発が普及の課題だ。研究チームは、これらの味や舌ざわりを再現することにはまだ成功していない。代替ポークが本物に取って代われるかどうかはテクノロジーの進歩にかかっていると香港ハイアット・リージェンシーの支配人ウィルソン・リー氏は述べている(ブルームバーグ)。

 環境保護、動物愛護、健康に対する人々の意識が高まるいま、代替肉の未来は明るいと言われている。オムニポークが今後見せてくれる進化に、大いに期待したい。